電子帳簿保存法とは?(3) 2021年改正後のスキャナ保存をわかりやすく解説

電子帳簿保存法は2021年度税制改正により要件が大幅に緩和され、より使いやすいものとなりました。今回は、帳簿や書類を電子データで保存する「スキャナ保存」について税理士がわかりやすく解説します。   そもそも電子 … 続きを読む 電子帳簿保存法とは?(3) 2021年改正後のスキャナ保存をわかりやすく解説

この記事は約4分で読み終わります。

電子帳簿保存法は2021年度税制改正により要件が大幅に緩和され、より使いやすいものとなりました。今回は、帳簿や書類を電子データで保存する「スキャナ保存」について税理士がわかりやすく解説します。

 

そもそも電子帳簿保存法とは?

「帳簿」(総勘定元帳、仕訳帳など)や「書類」(請求書、領収書など)といった国税関係書類は紙で保存することが原則とされていますが、一定の要件の下に電子データで保存することが認められています。この電子データで保存するときのルールを定めているのが電子帳簿保存法です。

 

保存の仕方には次の3つのパターンがあります。

・電子帳簿等保存

・スキャナ保存

・電子取引

今回、解説するのはこのうち「スキャナ保存」についてです。

 

スキャナ保存とは?スキャナ保存の対象は?

「スキャナ保存」とは、紙の書類をスキャンし、その電子データを保存する方法のことをいいます。次の書類についてスキャナ保存が認められています。

①資金や物の流れに直結・連動する重要な書類『重要書類』

契約書、領収書、請求書、納品書など

②資金や物の流れに直結・連動しない書類『一般書類』 検収書、見積書、注文書、申込書など

 

なお、仕訳帳や総勘定元帳など(帳簿)や棚卸表、貸借対照表、損益計算書など(決算関係書類など)はスキャナ保存の対象にはなりません。

 

スキャナ保存の要件

スキャナ保存は、保存する書類が「重要書類」か「一般書類」かで、保存の際の要件が異なります。「重要書類」の方がより厳しい要件が設けられています。2022年1月1日以降のスキャナ保存の要件は次のとおりです。

①解像度・カラー・階調情報・大きさ情報の要件

一定水準以上の解像度のスキャナで、カラーで読み取ること。また、解像度、階調情報、大きさ情報を保存すること。(受領者等が読み取る場合、A4以下の書類の大きさに関する情報は不要)。

なお、一般書類の場合は、グレースケールで可。また、大きさ情報の保存は不要です。

②タイプスタンプの付与

タイムスタンプを付与すること。
なお、入力期間内に書類に係る記録事項を入力したことを確認できる場合は不要。

③入力期間の制限

書類を受領後、一定期間以内(事務処理規程を定めている場合、最長で、受領から2か月とおおむね7営業日以内)にスキャンすること。

なお、一般書類の場合は入力期間の制限はありません。

④入力者等情報の確認・バージョン管理

入力者等の情報が確認できること。また、訂正や削除などを行った場合には、その事実や内容が確認できること。

⑤帳簿との相互関連性の保持

スキャンしたデータと帳簿との間に相互関連性を持たせること。

⑥見読可能装置・システム関係書類等の備付け/整然・明瞭出力

パソコン、ディスプレイ、プリンタ等と操作マニュアルを備え置き、帳簿等が速やかに、整然・明瞭に閲覧・出力できるようにしておくこと。なお、ディスプレイやプリンタ等の性能、設置台数に関する要件はなし。

⑦検索機能の確保

次の検索機能を確保していること
イ 取引年月日、取引金額、取引先で検索できること
ロ 日付または金額で範囲指定検索できること
ハ 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件で検索できること

なお、税務調査時に電子データのダウンロードに応じる場合はロとハの要件は不要。

 

2021年度税制改正によるその他の改正点

スキャナ保存制度を利用する上で、特に高いハードルとなっていた「定期検査(適正事務処理要件)」「領収書等への自署」が廃止され、入力期間が従来のおおむね3営業日以内から大幅に延長されました。また、税務署への事前承認申請も不要となっています。

一方で、罰則規定が設けられています。データの改ざん等の不正を行った場合には、重加算税が10%加算されます。

 

 

スキャナ保存制度に関するQ&A

スキャナ保存制度で必要となるタイムスタンプとは?

タイムスタンプとは、電子文書の存在時刻を証明する技術のことをいいます。スキャナ保存制度では、一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ(認定タイムスタンプ)を付与することが要件とされています。

 

 

まとめ

スキャナ保存制度について解説しました。今回の改正で、事前承認制度の廃止、領収書への自署の廃止、書類を受け取ってからスキャンするまでの期間要件の緩和などが行われ、より使いやすいものになりました。これまでは要件が厳しすぎたため簡単に利用できる制度ではありませんでしたが、今回の改正により、少し準備をすれば使うことができるような制度となっています。ぜひ活用を検討してみてください。